12.29.2017

続々・ひとのいない街 -岩沼の奇跡-

今回の内容

  ・岩沼ってどこ?

  ・元・協力隊員奮闘記

  ・復活の岩沼(日本の奇跡なるか)






回は羊!



興味があったらまず読んでみてください。
https://www.asahi.com/articles/CMTW1705130400001.html







過去二回にわたって書く書くといいつつ書かなかった、

岩沼視察でいいなって思った支援方法について書かせていただきます。

前々回「ひとのいない街」↓
https://plannersvantagepoint.blogspot.jp/2017/12/blog-post_25.html#more

前回「続・ひとのいない街」↓
https://plannersvantagepoint.blogspot.jp/2017/12/blog-post_27.html








岩沼ってどこ?



沼市は宮城県、仙台市の南に位置する街です。


「福島ちゃうんかい!」

・・・まあ、そうなるんですが、

でも、岩沼で起こり始めたことを参考にすれば、福島のコミュニティだって

うまくいくかもしれない、そんなことを思ったのです。



一時期、岩沼のお隣の名取市でお仕事をしていたのもあって、

あの辺には思い入れがあるのですが、

東日本大震災の津波により、大きな被害を受けた地域です。

現在でも津波を受けたエリアには、広大な平原が広がっています。

堤防の建設、防災林の育成など、新しい街づくりが進んでいますが、

津波によって集落ごと消失してしまったコミュニティは、

人々が避難時に散り散りになり、復活は絶望的かと思われていました。



しかし!

岩沼ではコミュニティが復活しつつあるのです。

多くの東北の地域が劇的な人口流出による打撃を受けている中で、

なぜ岩沼ではコミュニティが復活しつつあるのでしょうか?



実は、その陰には元・青年海外協力隊員たちの町おこし運動がありました。

任期を終え帰国した青年海外協力隊員が中心となって活動する

JOCA(青年海外協力協会)。

実は日本国内でのプロジェクトも持っていて

その一つが岩沼の再生です。

勿論、地域再生の主役は住民の方々ですので、JOCAはあくまで

縁の下の力持ちなのですが・・・

岩沼の牧場に関して、事の経緯を見てみましょう。






元・協力隊員奮闘記



年海外協力協会と、岩沼市が連携して被災者支援を始めてから、

4年が経過した頃(2015年頃?)のことです。

当時、青年海外協力協会は被災者支援として、

仮設住宅の見守り業務や、国からの支援を申請する補助などを行っていました。

少しずつ生活再建のめどが立ち始めてはいたものの、

岩沼の方々は長引く避難生活で心身共に疲労の色が見えていました。



そんなとき、岩沼で協力協会の職員として働いていた、

元・青年海外協力隊員のKさんが、

どこからか羊を連れてきて、飼い始めました。

朝、仕事に行く前にせっせと世話をしている姿を見て、

ご近所の岩沼の方々は「なんかやり始めたぞ」と面白半分に眺めていました。

Kさんも「なんか面白いこと起きないかな」程度に考えていたそうなのですが、

突然現れた羊は次第に人気者に。



ご近所さんと交流するうちに、もともと岩沼の街があった土地に、

羊を放牧する案が出てきました。

津波で流されてしまった街跡は、

(一部をメガソーラーなどに利用することが決まっていたものの、)

大部分が荒れ放題の草地になっており、景観的にもよくなかったのです。

「食欲旺盛なひつじくんなら草を食べてきれいにしてくれるだろう。」

そうゆうことで放牧が始まりました。



そしたら、今度は柵や畜舎などが必要だということになり、

「どうせなら地域の方にも手伝ってもらって、

一緒に仕事すればコミュニケーションにもなるし、元気出してもらえるのでは

という事で、スタッフ総出、岩沼市民の方にも手伝っていただき、

最初の飼育場が作られました。



そうこうしてるうちに・・・

「ひつじが増えました。」




どんどん数が増えるひつじくん達のため、

月2回ほど、地域の方が集まって、

継続的に牧場の拡張を行うことになりました。

その頃には既に、ひつじくん達も地域の小学校に出張して子供たちと交流したり、

牧場に訪れた人たちに癒しを与えたり(アニマルセラピー)

草食って景観を良くしたりと、大活躍。



数が増えると少し離れた地域からも、人が遊びに来るようになり

地域活性にかなり貢献するようになります。

先日は、牧場の名前や、新しく生まれた赤ちゃん羊の名前などを

地域の方から募集したり。

グッズも作られて、どんどん地域を盛り上げようと、活動は広がっています。





このように、素晴らしい活躍を見せる岩沼の羊ですが、

私が最も感動した点は、「もともと街があった土地」に、

「その土地でくらしていた人々」が集まるきっかけを与えている点です。

もともとそこで暮らしていたという事は、その土地に沢山の思い出があり、

同時に、震災で多くの命と生活を失ったという悲しみもあります。

ひつじくんたちのお世話をしていると、ある程度、

その悲しみが和らいだ状態で、昔なじみの土地に戻ってこられるのです。

そして、そこで昔なじみのひとたちに会い、

コミュニティが再結成・強化されるのです。

これってすごいことだと思うのです。



そして同時に、(身びいきかもしれませんが、)

青年海外協力隊員=コミュニティ活性のプロ、

さ・す・が!

とも感じました。





復活の岩沼




岩沼を視察して、その陰には様々な好条件が重なっていることに気づきました。

集団移転も成功し、新しい都市計画はうまく機能し、

もともと街があった津波の跡地も、牧場となって町おこしに貢献している。

その裏には、沢山の苦労・苦悩や、努力と幸運があり、

他の地域が単純に岩沼をコピーすることはできないとも思います。



青年海外協力協会の支援内容は、もちろんコミュニティ活性(牧場)

だけではありません。

都市計画立案・実行の補助を行ったり、国からの支援取り付けの手続きを

補助したりといった、裏方のお仕事を通して、岩沼を総合的にサポートしています。

そして何よりも、そういったサポートを受け入れ、活用できる体制にあった、

玉浦西地区の強靭なコミュニティーが成功のカギとなっています。



では、この岩沼から学べることは何でしょうか?






(日本の奇跡なるか?)



私は、これからの被災者支援はコミュニティ活性だと思っていますし、

現に、ほとんどの震災ボランティアが物理的な支援から心理的な支援に、

既にシフトしています。

避難先の慣れない土地で、厳しい暮らしをしている方々に、

やはり、今、最も効果的なのは心理的な支援だと思うのです。



岩沼の例は、この心理的支援の道しるべになるのではないかと思います。

例えば、福島では多くの方々が、他の地域へ散ってしまっており、

集団では暮らしていません。岩沼のように、

物理的に寄り添うことはできません

でも、心理的に寄り添うことはできる。

コミュニティがひとところに集まる可能性が無い以上、

市町村単位でコミュニティを復活させる意義は低いですが、

仲の良かったご近所同士なら、

もう一度繋ぎなおすこともできると思いますし、

それがどれほど心強いことでしょう。



社会学の世界では、しばしば社会を「社会集団」に分けて考えることがあります。

血縁関係にある(ことが多い)家族が、基礎集団という、

社会集団の基礎単位になります。



基礎集団の外に広がるのを第二集団と言うのですが、地域のコミュニティで言うと、

「ご近所」や、「ご近所」が集まった「自治会」、「自治会」が集まった

地方自治体等が地域のコミュニティにあたります。

現在の福島の状況は、基礎集団が散らばってしまい、「ご近所」や「自治体」

という第二の社会集団が無くなってしまったことで、

帰属意識がダメージを受けている状況と言えます。

散ってしまった基礎集団(特に仲のいい家族同士)を

何らかの形で結び直せれば

そのつながりから「故郷」を感じ取ることができ、

心理的なストレスを軽減できるのではないでしょうか。



岩沼の場合は、コミュニティを再度、強く結びつけたのは羊たちですが、

それと似た機能をもつものを作り上げ、住む場所は離れていても、ご近所同士が

仲良くできる場所を作るのです。

例えば・・・

ボランティアが、避難者の「趣味づくり」をサポート。

それぞれが作った趣味の一品(絵手紙、陶芸、書道などなど)を、

ネットなどを利用して、中の良かった避難者同士で共有・共同作品展化することで、

仮想空間上で「一緒に趣味を楽しむ体験」を共有してもらったり。



ネットが使えない場合は、交換日記の絵日記版とか、写真版とかで、

郵送でやり取りしてみたり。



・・・適当に一人で考えているだけなので、

大したアイディアは出てこないですね。。。

でも、遠隔で参加できる場を作り、そこを楽しく利用してもらうことで、

会話がなくなってしまったかつてのコミュニティを復活させることが

出来るかも知れません。



危機に瀕したコミュニティーも、結び直すことができるし、

それが真に復興につながることだという事を、

岩沼スタディーツアーは教えてくれました。



副題でもじっている「日本の奇跡」とは、

私の大好きな士郎正宗作品(攻殻機動隊、アップルシードなど)の中で登場する、

核戦争後、放射能まみれの日本を救い、驚異的な復活のきっかけとなった技術です。

岩沼がヒントをくれる、コミュニティ復活の技術。

「日本の奇跡」のように、新たなる希望になればいいな。



岩沼でのJOCAの取り組みについて、詳しくは下記をご覧ください!
http://www.joca.or.jp/activites/disaster/tohokuearthquake/miyagi/iwanuma/






予告



硬い内容が続いたので、次回はもう少し柔らかく・・・

【年末大掃除特集】
5Sを使って部屋をかたづけてみた(かたづけ学ってなあに?)

ロが教える、「嫌われるし失敗する5S」「嫌われるけど成功する5S」



的なものを、できれば年内に・・・お送りしたいです!






ご注意



今回の記事は主に、IWANUMA WAYプロジェクト関係者の方から、

スタディーツアーで伝え聞いたことを元にしています。

伝聞のため、すべての情報(特に時系列)が正確とは言えません!

より正確な内容にするため、情報を募集します!

訂正箇所に気づかれた方は、コメントでお知らせください。