1.07.2018

5S失敗の法則・成功の条件



今回の内容

5Sってなに?

も愛され、最も嫌われた活動

敗する5S活動
・天才の机は散らかっている
・やりっぱなし主義
・自己目的の悪魔

功する条件

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様こんにちは!

今回は日本の誇るKAIZENの雄、「5S」についてやっていこうと思います。

もともと「年末大掃除特集」としてやろうと思ってたんですが、ジタバタしてるうちにすっかり年明けになっちゃいました。

赴任前の忙しい時期に、無理矢理にでもこの記事を出そうと思ったのには、それなりに理由がございます。

協力隊にはマーケティング職種で参加する私ですが、お仕事の方では、メーカーの社員として、現場の改善活動にも関わったことがあり、5S活動についても、本業としての経験があるのです。

そして協力隊員の中には5S活動が任務となって派遣される隊員も、(特に医療関係を中心に)いらっしゃいます。

ですが、まずはっきり言います。



5Sは難しい!



現在、世の中には5S不要論や、アンチ5Sな経営者も増えています。私自身、5Sには必ずしも前向きではありません。

なぜ、よりにもよって発祥地の日本で、5Sは嫌われ始めているのでしょうか?

今回はその辺りを、わずかな経験と見聞を元に考えてみたいと思います。








5Sってなに?

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5Sとは、日本のメーカーを中心に行われている改善活動の手法の名前で、

整理 Seiri

整頓 Seiton


清掃 Seisou


清潔 Seiketsu


躾  Shitsuke


の頭文字を取って、5Sと言われます。

そもそも海外では、戦後日本の躍進のキーワードとなったのが、製造業を中心に行われた改善活動だと言われています。

「改善」は英単語kaizenにもなっているほど、良く知られており、日本人が途上国に行くと、現地では「まずkaizenを教えてくれよ」と言われることもよくあります。

そんなkaizenですが、青年海外協力隊の活動にも取り入れられ、特に医療関係職種では、現地の医療施設の職場改善のため、5Sの導入をサポートしてほしいという要望も多くなっております。






5Sの各機能



Sの機能をまとめると、次のようになります。



整理 Seiri

るものと要らないものを分別して、要らないものを処分します。不要なものを無くすことで次の効果があります。

的のものを見つけやすくする

管スペースを極小化して空間を効率的に使えるようにする

違ったものを取ることを防ぐ

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整頓 Seiton

るものを適切に配置します。取りやすい場所に、取りやすいように配置することで、次の効果があります。

つける・取る動作が最適化され、仕事の効率が上がる

険な場所からものを遠ざけ、事故を防ぐ

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清掃 Seisou

や場所事態をきれいにし、いつでも使える状態を維持する事で次の効果があります。

使いたいときに、状態が悪く使えないという事態を防ぐ

潔によって健康被害が出るのを防ぐ

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清潔 Seiketsu

理・整頓・清掃ができている状態を維持します。最高効率の状態を維持することで、次の効果があります。

スト削減効果の持続

質向上効果の持続

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躾 Shitsuke

理・整頓・清掃・清潔を習慣化し、この4つができていない状態に違和感を感じられるよう、感覚を磨きます。社員の質が向上することで、次の効果に基づく競争力向上が見込めます。

ラーの発見確率向上

たな改善案の出現 などなど

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こまでの内容をふまえると、5S活動がお掃除の基本を示したものではないことをご理解いただけると思います。

5Sは、作業者のパフォーマンスを最大化させるために、職場環境を整える改善活動です。

改善活動である以上、5Sは、職場が抱える「課題」に対して、「5つのS」の観点から、改善策を探る指針なのです。






最も愛され、最も嫌われてきた活動



て、ここまでご紹介してきた5Sですが、「パフォーマンスを最大化」「職場改善」「社員の質を向上」「習慣化」「競争力向上」...などなど、いかにも経営者が好きそうなパワーワードが並んでいることにお気づきでしょうか。

そして、5Sの例を検索したりすると、雑然とした職場がきれいに整った Before / After の画像が出てきたりします...

そうです。
私の見聞きする以上では、5Sは最も経営者・現場責任者に愛される改善活動なのです。

中小企業や町工場の社長さんから、大企業の工場長まで、いろんな人が5Sを見て「これをやるぞ!」と、飛びつくわけです。

なるほど、確かに成功した5S活動の効果は目を見張るものがあります。

しかし、悲しいことに、5Sは最も失敗しやすい改善活動の一つであり、それゆえに現場から最も疎まれる活動の一つです。






失敗する5S活動



は、どうすれば成功するのでしょうか?

そのヒントは、失敗例を分析することで得られるように思います。よくある5S失敗の原因をまとめると、次の3つになるかと思います。

課題がわかっていない

評価ができていない


メリットを共有できない


この3つについて、詳しく考えていきます。






天才の机は散らかっている




1つ目の原因については、目標設定の失敗と言い換えることができます。

「5S活動、いいじゃん!」と思ったあんぽんたんが、自分の現場が抱えている課題を分析する前に、「とにかく5Sを徹底するぞ!」とトップダウンで突っ走った結果、失敗します。

5Sの危険な点は、徹底しすぎると効率が下がることです。

確かに、適切に5Sを行うことで作業速度が上がったり、エラーや事故が減って品質が向上したりする効果はあるのですが、5Sを行っている時間は、何も生産していない訳ですから、そこに時間を取りすぎると、生産性は下がります。

更に、きれいに見せようとしすぎることで、しまっているところに物を取りに行く導線が伸びたり、取り出す動作が増えたりするなど、2つめのSである、「整頓」の部分が破綻している例もよく見ます。

天才の机をモデルにして考えてみましょう。

画像提供元 http://publicdomainq.net/womans-legs-0007987/

ョブズやザッカーバーグ、アインシュタインからベーコンに至るまで、天才たちの机が非常にきちゃないのはよく知られていることですが、ここには2つの理由があると言われています。

上の情報量を増やし、創造性を刺激している

は散らかっていない


一つ目の理由についてですが、彼らはどうやら「面白い」「興味深い」と思った情報を、どこかにしまい込んだりせず、机の上に置いていたそうです。

それにより、考え事をしている時等、意識的に見ていない(lookでなくsee)状態でも、無意識下で興味深い情報が視界に入り、斬新な着想の補助になっていたそうです。

編集者や漫画家、ゲーム制作者の机がおもちゃであふれているのも同様の理由ですね。



二つ目の理由についてですが、散らかっているように見える机でも、彼らは書類の山から必要なものをすぐに取り出すことはできていたと言います。

つまり、彼らは頭の中で、どこに何を置いたか、きれいに整理して記憶しているため、ほかの人間からは汚く見える状態でも、彼らにとってはきれいに整理されているのと同じ状況だったのです。



こから、一つの教訓を得ることができます。

それは、作業者が慣れていれば、ある程度散らかった状況の方が生産性が上がるということです。

個人に割り当てられている作業スペースでは、日々作業をする中で、よく使うものから順番に取りやすい場所へ散らかっていきます。

はたから見て散らかっていても、作業者がその位置を把握しており、それを取る動作が最適化されている状況が生まれます。

そのような状況下では、毎日何回も使われる工具が出しっぱなしになっていたりしますが、これを毎回片付けるよう習慣化してしまうと、その「片付ける動作」が逆にムダとなるのです。

ですから、そのような状況下では整理は必要でしょうが、整頓は力を入れないほうが良いいのです。

従って、「整頓」はパーソナルスペースで効果を発揮しにくいという法則が出てきます。



は、整頓が力を発揮するのは?

これは明らかに、作業者が複数人いたり、不慣れな人が利用する可能性が高かったりする、「共用スペース」です。

個人の好き勝手で置くと、他の人が迷惑する状況では、「全員が作業しやすい」ように標準化することで、「チームとしての最高効率」を目指します。



こういった判断は、現場を良く調査し、5Sを実行する前にまず、5Sで解決すべき現場課題を洗い出しておくことで可能になります。

重要なのは、闇雲に始めず、解決すべき課題に沿って、5Sの実行計画をデザインし、そのデザインを現場に周知・すり合わせしながら推進することだと思います。






やりっぱなし主義



2つ目の原因、評価ができていない。

これは上に書いたこととほぼ一緒と言っても良いのですが・・・

5Sも改善活動である以上、きちんと効果測定しながら、労力に見合った効果が出るラインで進める=投資対効果があるラインで進める必要があるのに、それをしないことから起こる問題があります。

それは、作業者が効果を実感できず、モチベーションが下がることと、先ほどと同様に非効率になるまで徹底してしまうことです。

改善活動とは、プロジェクト化して進めるような派手なものではなく、毎日コツコツと進めることで効果の出る活動です。

毎日やるには、活動主体がその活動を楽しめることが必要です。

個人の生産性や、エラーの発生件数、残業時間などをまず数値化し、5S活動の中でそれらの指標=KPI(Key Performance Indicator)を随時確認することで、効果を視覚化してゲーム感覚で進めることが可能になります。


画像提供元 http://gahag.net/011529-data-calculator-business/

5Sの担い手となる現場の人々が効果を実感できなければ、活動のモチベーションが上がらず、推進者が嫌われる原因となります。

みんなで効果を実感しながら楽しく進め、効果が出なかったらみんなで原因を話し合って新たな改善活動につなげるべきです。

つまり、計画に対する進捗と、その実績を定期的に評価・周囲と共有し、常に修正を加えながら楽しく進めるのがポイントになります。





自己目的の悪魔



5Sに限らず、すべての kaizen は陳腐化との戦いです。

やりっぱなし主義が進行し、5S活動を行うこと自体が5Sの目的となってしまう、最低最悪の状況が頻発しています。

最近、アンチ5Sな経営者が増えているのも、この状態になる事例があまりに多いからではないかと思います。

経営者がトップダウンで進めた結果、経営者へのおべっか的な意味も含め、5Sを推進する現場責任者が後を絶ちません。

課題に沿った計画立案、効果の刈り取りといった基本のプロセスを踏まなかったり、「躾」のプロセスまで行ききってもなお、5S推進チームを解散せずにだらだらと活動をつづけたりすると、現場の生産性が劇的に下がります。

現場を分析した結果、5Sが必要ないという結論だってありなのです。

5Sを進めることを要望されているからと言って、自分の仕事の目的を「現場課題の解決」ではなく「5Sの推進」と思い込んでしまうと、悲劇が待っています。






て、3つ目の原因、「メリットを共有できない」というのは、活動を始める前に起こります。

もう一度5S活動のメリットを見返してみますが、

「生産性を上げる」「品質を上げる」「職場環境を整える」「現場の課題を解決する」

どれも経営者に多大なメリットをもたらします。

ですが、5Sを実行するプレーヤーは、現場の作業者の方々です。

つまり、推進者である経営者のメリットと、推進主体である現場作業者のメリットが直接は一致しないのが5S活動です。

両方に恩恵があるように調整しないと、

「社長のおっしゃることは分かりますけどさ。。。(俺らにしたら仕事増えるだけなんだよな)」

という状況になるのです。

5Sの推進状況によっては作業者に報奨金が出るなど、プレーヤーの皆さんが5Sによってメリットを享受できる状況を作ることが、結構重要です。


画像提供元 http://gahag.net/010091-businessman-window/






成功の条件



て、今回のまとめも兼ねて。

5Sのよくある失敗パターンを考えつつ、成功の条件を考えてきましたが、まとめると次のようになります。

まず、改善活動の基本的な手順に沿って進めること。

基本的な手順とは、現場の調査、課題の明確化、課題に沿った活動内容の計画立案、実行、効果の確認、修正、以降PDCA...といった流れの事です。

次に、活動の効果を視覚化し、推進主体と共有することで、楽しく活動すること。

最後に、活動することにより、推進主体にもメリットが出るようにし、そのメリットを十分に理解してもらうこと。



本当はもっと色々コツとかセオリーとかあるようなのですが、メインどころはこんなところではないでしょうか。

画像提供元https://www.photo-ac.com

今回も長々と書いてしまった割に、まとめてみると「そんなん言われんでも分かっとるわい!」と言われてしまうような、超基本しか出てないのですが、実際に5Sをやるとこの基本ができずにすぐ失敗するんです。

基本に忠実に進めることがいかに難しいか。

そして、基本に忠実に進められることがいかに素晴らしいか。

なんかエピソード3のメイス見たいなこと言ってますが、すごい人って基本ができてますよね。

そういうことなんだと思います。






回は以上です!

毎度毎度、長い記事にお付き合いありがとうございます!






次回予告

後日、2018年1月9日(火)はいよいよケニアに向けて出発!

・・・ということで、決意表明的なもの書いといた方がいいんじゃないかと思っとります。

どこで何するのか、私の任務の詳細についてもご紹介したいと思います!






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